DreamPresenter

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DreamPresenter Vol. 1 Chapter. 3.0

chapter3:これから:

父さんから熱い抱擁をしばらく受けた後、僕は父さんにリビングに連れて行かれた。そこでは舞華と見知らぬ女性がお茶を飲んでいた。その見知らぬ女性は僕らが入ってきたのに気づくと、彼女は子どものよう無邪気に、
「意識が戻ったのね。よかったぁ。どこも痛いところはない?」
そういっていきなり僕の頭をなでてきた。確かに彼女は僕よりも年上だったが、童顔で無邪気な彼女に頭をなでられると年上だろうと思っても、ひどく子ども扱いされているような感じがした。しかし彼女はそんな僕の様子を気にも留めず、笑顔で父さんに話しかけていた。
「カイ君、この子はもう大丈夫なの?」
「あぁ、とりたてて悪そうなとこは見当たらないし。それより、こいつのことで話があるんだ。」
こいつってところが少し癇に障ったが無視した。
「?、何?」
「前に話したことがあるだろ。こいつがかいむだよ。」
父さんが目の前の女性に僕のことを説明すると、女性は漫画のキャラクターのように大げさなリアクションをとって反応してみせた。
「あぁーーーー!!君がかいむ君なんだぁ!私はカイ君の妻の桐生美華(きりゅう みか)よ。初めまして。」
そう明るい声で言い放った。美華があまりにも衝撃的なことをさらりと言ったので、思わず聞き流しそうになった。
「えっ?はい…よろしくおねがいします…。はぁ!?つ、妻!!?」
事態を飲み込めない僕に父さんが改めて事情を説明しようとする。
「あぁ…その、話すと長くなるんだが…俺は再婚したんだ…。婿養子というで。今は桐生海山(きりゅう かいざん)だ。それで、今…」

「ふざけるな!!」
思わず叫んでいた。いや叫ばずにいられるはずが無い。理不尽な過去をなんとかしようとここに来たはずが、更に理不尽で理解不能な事が起こってばかりなのだ。馬鹿にされているとしか思えない展開だった。
「あのな、これは…」
父さんは、なんとか言い訳をしようとしたが、知った事ではない。失踪して、こんな変な場所に住み着いているだけでも、怒り心頭であるのに、その上「再婚した。」だ。言い訳の余地はないだろう。
「言い訳なんていい!僕はっ!」

"ポケッ"

いきなり、後ろから頭を小突かれた。
「やめなさいよ。全くあんたはいったいいくら私をいらつかせれば気がすむのよ。」
小突いてきたのは美良だった。美良は腕を組みながら、面倒くさそうに言った。美良からしたら、喧嘩になる前にとめたくてそんなことをしてくれたのだろう。しかし、僕の気持ちはそれでは止まらなかった。寧ろ、加速しようとまでしていた。僕は、父さんの胸ぐらを掴んだ。
そうして、そのまま殴り掛かろうという所で、父さんは大きく首を横に振った。僕は、最初はふざけているのかと思って、拳を振り上げたのだが、すぐに父さんが何を心配しているのかが分かった。
「二人とも、こんなところでお痛しちゃいけないよね…。」
僕はさっきみた美良の引きつった笑顔の数十倍の恐怖を感じた。先ほどまで僕の隣で子どもっぽくて優しそうにしていた美華さんが、この世のものとは思えないほどの満面の笑みで僕の隣に立っていた。その笑顔は般若の面を大きく上回る恐怖を植え付けるものだった。このまま殴ったら、どうなるか分からない。そんな、恐怖心から僕は、振り上げていた拳をおろし、大人しく父さんの提案に従った。
「うん、皆仲良くが一番ね!!」
その場にいる誰も、その言葉に突っ込まなかった。

美華の助力(笑顔)もあって、喧嘩をする事無く、平和に対話をすべくリビングのソファや椅子にそれぞれ腰を下ろした。そのメンバーは僕に父さん、美良、舞華、美華の5人である。一同が一通り落ち着いたのを確認すると父さんがまずこの異色な家族会議を始めた。
「美良、舞華、今まで多くは語らなかったが、俺には二人以外に子どもがいる。」
重々しい口調でそう言った。すると、それを聞いてすぐに美良が父さんに食いかかった。
「父さん、それは前に聞いたことがあったけど、まさかこいつがそいつだって言うわけ!?」
父さんは、喧嘩腰な口調の美良をみて、困った顔をして言った。
「そうだ。こいつが俺の息子、天上かいむだ。要は3人は兄妹ってことだ。」
兄妹…、僕らは顔を見合わせていた。兄妹と聞いて、また聞きたい事が沢山沸いては来たが、とりあえず、ここは挨拶の一つでもしておかないといけない。僕は、改めて自分から彼女達に自己紹介をした。美良は当然明らかに嫌そうな顔で僕を見ていたんだけれど…。
「えーっと。天上かいむ(てんじょう かいむ)です。よろしく。」
「私は桐生舞華(きりゅう まいか)です。よろしくお願いします。兄さん。」
舞華は戸惑いながらもそう答えた。彼女の方は、直ぐに僕が兄という事を受け入れてくれたらしい。一方、美良の方は、そんな舞華の様子を見ても態度を一つも変える事なく、

「あんたなんか認めない!!」

と一蹴された。ここまで、自分を否定されると、そうだと予想していても少し凹んだ。そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、舞華は僕に対する美良の態度を一喝した。
「美良!!いい加減にしなさいよ!兄さんに向かって!」
「こんなやつ、兄でもなんでもないわよ!全く、舞華はどうしていつでもそうなわけ?」
二人のヒートアップする口喧嘩に両親である父さんも美華さんも呆れていた。僕は何とかその場を仲介しようと試みたが原因が僕にあるので仲介出来るはずがない。おろおろしてしまい何も出来ない僕の前で口喧嘩はますますヒートアップしていく。
一体こらからどうなってしまうのか。これから、この事実を飲み込まないといけないのか…。夢であってくれれば…。これからのことを思うと憂鬱になった。現実逃避がしたくなった。ゲームの中なのに…。

一応、その後、美華の雷が炸裂して僕は桐生一家に受け入れられた。もともとの父さんへの怒りもいつの間にかどこかにいってしまっていた。それ以上に未だに父さんに会ったとかその他の現実感がなかった。物置として使われていた部屋を軽く片付け父さんの折りたたみ式ベットを設置して僕の部屋にしてもらった。そのまだ馴染みのない部屋でベットに寝っころがり窓の外の星空を眺めた。星空はまるで美しい写真の世界をそのまま持ってきたかのように美しく輝いていて、現実感を失わせていた。でもここは少なくとも嘘の世界ではなかった。五感は全て正常に働いていたし体力も消費する。歩こうと思えばちゃんと現実通り歩くし、何ら現実と変わらない。パラレルワールドのようなこの世界に僕は一抹の不安を覚えつつ、今は次第に遠のく意識、睡魔に逆らえず、ベットに体を預けたのだった。

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