DreamPresenter

5

DreamPresenter Vol. 5 Chapter. 2.0

chapter 2.0: 実力テスト:

冬休みは瞬く間に過ぎて、三学期が始まった。ただでさえ日数の少ない冬休みなのに、僕は最初の一週間を喪失してしまっていた。さらに、一週間喪失したせいで、溜まりに溜まった宿題に追われたので、ますます冬休みが少なくなってしまった。いつもより冬休みの宿題が簡単だったから助かったものの、ヘタをすると宿題が終わらないまま始業式を迎えるところだった。まぁ、宿題を全てをこなし、無事に始業式に出ている今となっては、それもいい思い出…なのかな。

僕の高校は、始業式の後に実力テストがある。二学期に学んだ内容の復習として、5 教科 7 科目みっちりテスト時間が設けられている。ただでさえ、休み明けなのにテストまであるとは、なんとも憂鬱な話だ。いつもならば、一応、二学期の内容を見なおしたりはするのだが、冬休みの宿題に追われていたため、ロクに見直しも出来なかった。実力テストだということで、ぶっつけ本番で行くことにするしかない。何もしてこないと、逆に肝が座るのか、僕は、悪あがきをせずに自分の席に座って天命を待った。

まもなく、テスト用紙が配られ、実力テストが始まった。裏向きになったテストを、ええいままよと勢い良く表に向け、書かれている問題を目で追った。
(あれ?)
違和感があった。僕は、改めて冷静になって、問題を眺め、解き始めた。
(えっ…、なんだこれ…?)
僕は、問題を解けば解くほど、不思議な感覚に襲われた。問題が解けるのだ。冬休みの宿題の分野の問題が多いからといえばそうなのだが、それ以外の範囲も、すっと頭に入ってきて解決法が導かれていた。天才というのは、こんな感覚で問題が解けるのだろうかと思うほど、スラスラと…。問題が解けるのは、一科目だけの話ではなかった。全科目、宿題のなかった科目についても同じようにスラスラ解けた。テスト問題がスラスラ解けるのは嬉しかったが、逆に気持ち悪さを感じた。もしかすると、空白の一週間が関係しているのだろうか。宇宙人にキャトルミューティレーションでもされて、脳を改造されたのだろうか。いやいや、そんなハズはない。問題が簡単なんだろう。でなきゃ、こんなご都合主義的な超能力を得られるはずがない。

不思議な手応えを持って、テストは終わった。テストが終わると、すぐに、僕の隣にいた零治が声をかけた。
「お疲れー!!今日のテストは、タフな問題が多かったな。いつも以上に疲れたぜ。」
「えっ…、あぁ、うん。本当、毎回毎回嫌になるよね。実力テストは。」
「とりあえず、試験結果は一週間後だ。それまで、ゆっくりしようぜー。」
そう言って零治は大きく伸びをした。零治は、見た目に反して努力家だ。「日本の明日は俺が創る。」とかいって、旧帝大を目指して勉強している。勿論、その努力のおかげで、成績もいつも上位だった。その零治が、今日のテストはタフだといった。僕は、ますます不安になった。きっと、僕がテストを解き間違っているんだと思い込んで、その日を終えた。

***

実力テストから一週間後、テスト結果が発表された。僕の高校では、実力テストの結果は学校の掲示板に張り出される。平均点、点数の分布、そして、5 教科合計点上位 100 名および下位 10 名の名前だ。毎回テスト結果発表では、大学合格番号を確認に来る受験生のように、掲示板の前に人だかりができる。点数が良くても、悪くても貼り出されてしまうため、みんながみんなこぞって確認しに来るのだ。僕も、そんな人だかりの後ろのほうから、成績表を覗き込んでいた。僕の成績は中の上くらいなため、普通名前が載ることはない。だから、いつも後ろのほうから眺めるだけで十分なのだ…。
「!!!?」
「おーい、かいむー。」
「うえっ!?」
驚いている最中に、声を書けられたので、思わず奇声を上げてしまった。何人かの人が、こちらを向いていて恥ずかしい。
「何、変な声出してんだよ。」
「ふふふ、めずらしいね。かいむが、そんなに取り乱すのって。」
そこには、零治と蘭が仲良く並んで立っていた。蘭も零治と同じ大学を目指しているため、二人は、名前の張り出される常連だ。本当に、妬ましいほどに、才色兼備な二人だ。と、そういうことではなくて…、
「今回、俺はのってないかもなー。」
「はいはい。いつもそう言って、私よりも、いつも上位にいるくせに。」
「いやいや、今回は、本当に自信ないって…。かいむ、お前はどうだった?」
「えっ?うん、まあまあかな…。」
「あっ!かいむ。ということは、上位 100 位にはいったの?」
「すげーじゃん。何位何位?」
零治は、そう言って、乗り出して掲示板を見た。
「お…。」
しばらくして、零治は、息を止めた。

 ... 4 番 天上かいむ 441 点、 5 番 雛菊零治 438 点、 ...、 15 番 向島蘭 410 点 ...

僕は、零治に勝っていた。今まで、 100 番にも入らなかった僕が、学年 5 指に入るほどの秀才の零治に…。僕にとって、驚きの結果だったが、零治は、もっと驚いたようで、目を見開いて掲示板を見ていた。
「かいむ、すごいじゃない!!どうしたの!?」
蘭が、興奮気味にそう言うと、零治も頭をポリポリ掻きながら、
「すげーよ。俺の完敗だ。ちきしょー…。お前、一週間記憶がないとか言ってばっちし勉強してたのかよ。」
「いや…えーっと、たまたま、勉強していたところがあたっただけだよ。」
僕は、何故かそう嘘を付いた。特に、今回は頑張ってもいなかったのに零治に勝ってしまったのが申し訳なかったのかもしれない。イカサマを使って勝ったような気分だった。零治も、いつもの調子に戻そうとしているが、動揺を隠せないようだった。蘭は、それを察しているのかいないのか、元気よく声を出して言った。
「これからは、三人で勝負だね!これなら、大学も三人同じ大学を目指せるんじゃない?」
「そうだな。かいむ、今度はゼッテー負けないからな!!」
零治がポンポン僕の背中を叩いた。顔は笑っていたが、その言葉は、本気そのものだった。零治は負けず嫌いな性格だった。テストや運動会、音楽会にいたるまで、僕に勝負をしかけてきた。ほとんど僕の負けっぱなしだったけど…。だから、僕にとって、零治は羨ましい、尊敬する存在だった。
「うん。頑張るよ。」
僕は、それだけ言った。

今日もまた、代わり映えない一日が始まる。でも、僕の心は、不思議な感覚で満たされていた。何故かテストの問題を解けるという未知の能力への違和感、そして、零治に勝ったという、今までにはなかった優越感だった。

ページ上部に移動